夜と霧 を読んだ。
非常に面白い。 星★★★★☆(4つ)
ちなみに、★5は人類の残した究極の長編(たとえばカラマーゾフの兄弟)レベルにしかあげられない。この話はノンフィクションというのとあまり長くないので★4。
夜と霧とは、エリート精神科医のフランクルがナチスのユダヤ人強制収容所に入れられて、5%程度の確率で生きてもどってくるまでの、フランクルの視点から見た、こまごましたことの雑記と所見である。
この小説というかルポは非常に無駄がない。
フランクルはあまり自分の感情については書いていない。
このルポは恐らく強制収容所について書いたほかのどんなルポとも視点が違うし、これが作り物ではなく、ルポであるがために、筆者が、そして人間が、どれだけ醜く恐ろしい存在であると同時に、どれだけ純粋で、優しく、優れた存在なのかということを、悟らせられる、一冊だと思います。
たとえ強制収容所にいても、人間は、一日1かけらのパンをいつ食べるかということを楽しみに生きたり、他人を気にかけたり、お祈りをしたり、空を美しいと思ったり、愛している人のことを考えたり、今から死ぬというときに、この世の最も美しいものに気づいたりするのだった。
人間は美しい。同じくらい汚く醜い人間も、人間の中にはいるけれど。
人間とは、筆舌尽くしがたい、仮に神が人間を創ったとして、もはや神の想像の域を超えた、謎の存在であると私は思う。
このルポを読み、私も、強制収容所で、疲れきった死にかけのやせさばらえた体で、仲間によばれて外で見た夕焼けがとても美しかったときのことを想像した。
それは美しかった。
涙が出ました。
美しいのは夕焼けではなく、それを美しいと思った彼らの心だから。
美しいのは彼らだからです。